営業事務から経理事務へ転職するには?活かせる強みや年収相場、面接突破のポイントを徹底解説
オフィスワークの中で営業現場を支える「営業事務」から、企業のお金の流れを正確に管理する専門職「経理事務」へのキャリアチェンジを目指す方は数多く存在します。
営業事務として受発注業務や請求書発行に携わる中で、「より専門性の高い実務スキルを身につけ、市場価値を高めたい」「突発的な依頼に振り回されがちな働き方から、計画的に業務を進められる環境へ移りたい」「将来にわたって長く通用するバックオフィスの基盤を築きたい」と考えるのは自然な流れといえます。
しかし、中途採用市場において経理職は「実務経験者優遇」の求人が多く、未経験からの転職は難易度が高い領域です。「経理の実務経験がないのに採用されるのか」「簿記資格はどのレベルまで必要なのか」「面接で職種を変えたい理由をどう伝えれば評価されるのか」といった疑問や不安を抱く方は少なくありません。
結論から言えば、営業事務で培った「売掛管理や請求業務の実務感覚」「ミスのないデータ処理能力」「他部署や取引先との調整力」は、経理事務の実務に直結する大きな強みです。適切な資格対策を行い、営業事務の経験を経理の視点から再定義できれば、未経験からでも十分に内定を獲得できます。本記事では、営業事務から経理事務への転職市場や年収相場、評価されるスキル、選考面接を突破するための志望動機・自己PRの作成法まで詳しく解説します。
営業事務から経理事務への転職市場と評価される理由
未経験から経理事務を目指す際、営業事務のバックグラウンドは他職種からの転職希望者と比べて非常に有利に働きます。企業の採用担当者が営業事務出身者を好意的に捉える理由は以下の通りです。
1. 売上やお金の流れ(商流)を実務レベルで理解している
営業事務は、見積書の作成、受発注データの登録、納品書や請求書の発行、入金消込(売掛金管理)など、企業の売上に直結する商流の最前線に携わっています。完全な未経験者とは異なり、「企業間取引においてどのような書類が発行され、どのようにお金が動くのか」を肌感覚で知っているため、経理の初期業務である売掛・買掛管理や仕訳入力への適応が極めて早いと評価されます。
2. 書類の不備や数字の違和感に気づく「実務的な注意力」がある
日々の受発注処理や請求業務において、単価の入力ミスや納期のズレ、消費税率の誤りなどを防いできた経験は、1円単位の正確性が求められる経理の現場でそのまま活きます。数字に対する責任感や、二重チェックを怠らない几帳面さは、経理担当者としての素質そのものです。
3. 他部署とのやり取りを円滑にする「社内調整力」が備わっている
「経理は一日中誰とも話さずに机に向かっている仕事」というイメージを持たれがちですが、実際には提出書類の催促や経費精算の確認など、営業部門をはじめとする他部署との連絡調整が日常的に発生します。営業担当者の多忙さや現場の状況を熟知している営業事務出身者は、社内に対して角を立てずに協力を引き出し、スムーズに書類を回収できるコミュニケーション力を持つ人材として重宝されます。
営業事務と経理事務の業務内容・働き方の違い
職種を変えた後のミスマッチを防ぐため、営業事務と経理事務の仕事の進め方や責任範囲の違いを整理します。
| 比較項目 | 営業事務 | 経理事務 |
| 主な業務目的 | 営業活動のサポート、商談・受発注の円滑化 | 企業活動の数値化、正確な財政状態・損益の把握 |
| 扱う数字の性質 | 自部門の売上、受発注数、在庫数 | 全社のお金の出入り、仕訳、経費、税金、決算数値 |
| 仕事のペース | 営業や顧客の都合による突発対応が多い | 月次・年次のスケジュールに沿って計画的に進行 |
| 主な繁忙期 | 月末、企業の繁忙期、商談集中時期 | 月末月初(月次締め)、決算期(本決算・四半期決算) |
| 求められる専門性 | 臨機応変なサポート力、スピード感、社内外折衝 | 会計基準・税法の知識、規則通りの厳格な処理、正確性 |
営業事務が「現場の動きに柔軟に合わせる流動的な働き方」であるのに対し、経理事務は「年間・月間の定例スケジュールに沿って厳格に数値を固めていく働き方」へと変化します。
経理事務の平均年収と給与相場
営業事務から経理事務へ転身する場合の年収水準や、その後のキャリア展望について整理します。
想定平均年収は約320万〜420万円前後
中途採用における未経験からの経理事務の想定年収は、およそ320万〜420万円前後(月給にして22万〜28万円程度、想定賞与を含む)が一般的なボリュームゾーンとなります。
- 営業事務との給与差:
スタート時点の基本給水準は営業事務と同等か、わずかに高い程度であることが大半です。一時的な大幅な年収ダウンが起きにくい点は、同じ事務職同士のキャリアチェンジにおけるメリットといえます。 - その後の昇給と専門性の価値:
営業事務は一定年数を経ると業務内容が頭打ちになり、大幅な昇給が難しくなるケースが見られます。一方、経理事務は日々の伝票入力から、月次決算、年次決算、税務申告、資金繰り、開示書類作成へと業務の難易度を広げていくことが可能です。決算業務を一人で完結できるようになれば、30代で年収450万〜550万円以上、将来的に財務や管理会計に携わるポジションへステップアップすれば年収600万円以上を狙う道が開かれます。
採用面接で面接官が厳しく見ている「4つの評価基準」
営業事務から経理事務を受ける選考において、採用担当者が応募者の適性を確かめるための主要な判断基準を整理します。
1. 簿記知識の有無と「自発的な学習意欲」
実務経験がない応募者を審査する際、最も客観的な判断材料となるのが資格の有無です。最低でも日商簿記検定3級、正社員として採用を勝ち取るためには日商簿記検定2級を取得しているか、あるいは合格に向けて学習を進めている事実が求められます。「入社してから経理の知識を学びたい」という受け身の姿勢は、不採用の決定打となります。
2. ルールを厳格に守り抜く「几帳面さと倫理観」
経理はお金を扱う部署であるため、社内規程や税法に反する領収書や請求書を例外扱いすることは許されません。「営業担当者が急いでいるから」「同僚に頼まれたから」と情に流されることなく、会社の規則に則って毅然と対応できるコンプライアンス意識が問われます。
3. Excelなどの「PC実務・データ加工スキル」
経理実務では、会計ソフトへの入力だけでなく、Excelを用いた売上データの突合、前月比の差異分析、集計表の作成などを日常的に行います。VLOOKUP関数、IF関数、ピボットテーブルなどの機能を実務で使いこなせるレベルにあるかが重視されます。
4. 決算期の業務集中に対する「スケジュール管理力」
経理には「月次決算を毎月第〇営業日までに締める」といった厳格な期日が存在します。限られた日数の中で膨大なデータを精査し、期日までに正確に締め切るための段取り力や、繁忙期における責任感が確認されます。
面接官を納得させる「転職理由」の言い換え方
面接において、営業事務から経理事務へキャリアを変える動機を前向きに伝えるための変換技術を整理します。
1. 「突発的な依頼や社内からの無理難題に振り回されるのが嫌になった」
- NGな本音: 営業担当者の気まぐれな依頼や急ぎの対応に追われて疲れ果てた。
- 適切な言い換え: 「突発的な依頼への対応にとどまらず、年間や月間の明確な目標スケジュールに基づき、計画的かつ着実に数値を固めて組織の経営基盤を支える業務に携わりたいと考えたため。」
2. 「営業事務の仕事は誰でもできる定型業務に思えて将来が不安」
- NGな本音:営業事務を続けていても市場価値が上がらない気がして焦っている。
- 適切な言い換え: 「日々の受発注や請求業務を通じてお金の流れを扱う面白さを知り、より専門的な簿記・会計知識を深めて、会社の収支全体を正確に管理・分析できるスペシャリストとして成長したいため。」
3. 「もっと集中して落ち着いた環境でデスクワークがしたい」
- NGな本音: 電話対応や雑用が多くて作業に集中できないから、静かな経理が良い。
- 適切な言い換え: 「細かな数字の精査やデータの整合性を検証する作業に自身の几帳面さや適性を実感しており、1円のズレも許されない厳密な確認を通じて組織の信頼性を守る役割に専念したいため。」
選考面接で評価を高める「志望動機」の作り方と例文
面接官に響く志望動機を作成するには、「営業事務の実務を通じて経理に興味を持った原体験」「簿記学習などの自発的な取り組み」「営業事務の経験がどう活きるか」の3点を筋道立てて伝えます。
例文1:日商簿記2級を取得して経理事務へ挑戦する場合
「前職では専門商社にて営業事務として3年間勤務し、受発注管理、請求書発行、売掛金の入金消込業務などを担当してまいりました。日々の業務でお金の出入りを管理する中で、自身が作成している請求書や売上データが、最終的にどのように会社の財務諸表へ反映され、経営判断に活用されているのかという会計の仕組みに強い関心を持つようになりました。
そこで、経理としての基礎を確立すべく日商簿記2級を取得し、財務諸表の構造や原価計算の知識を体系的にインプットしてまいりました。
貴社は堅実な財務体質のもと、徹底したコスト管理と事業拡大を両立されている点に深く惹かれております。営業事務で培った商流への理解と正確なデータ入力スキルを活かし、まずは日々の伝票起票や売掛・買掛管理をミスなく遂行し、将来的には月次決算の主担当として貢献したいと考え、志望いたしました。」
例文2:簿記を勉強中であり、実務適性をアピールする場合
「前職ではメーカーの営業事務として、見積書作成や売上伝票の起票、月末の請求締切業務を担当してまいりました。その際、請求金額と入金額の差異原因を調査して解決したことや、仕入先からの請求書を照合して誤請求を未然に防いだ経験を通じ、数字の細かな違和感を見抜き、正確にお金を管理する業務に最も高いやりがいを実感いたしました。
自身の強みである几帳面さをより高度な専門領域で発揮したいと考え、現在は日商簿記2級の合格に向けて学習を継続しております。
貴社の経理事務におきましては、営業現場の動きを理解している強みを活かし、社内からの領収書回収や問い合わせ対応を円滑に進めながら、正確かつスピーディーな帳簿作成で管理部門を支えてまいります。」
面接で説得力を持たせる「自己PR」の例文
自己PRでは、単なる事務処理の速さだけでなく、「ミスを防いだ仕組み化」や「他部署との調整実績」を具体的に伝えます。
自己PR例文(数字の正確性と業務改善の実績をアピールする場合)
「私の強みは、膨大な数値データを扱う中でも細かな違和感を察知し、ミスを未然に防ぐための確認体制を自ら整える力です。
前職の営業事務におきましては、月間〇〇件に及ぶ請求書発行と入金確認を担当しておりましたが、担当者ごとに請求締め日の確認方法が異なり、月末の請求漏れや金額差異が発生しやすい状態にありました。そこで私は、顧客ごとの入金サイクルと締め日を一覧化したチェックリストを作成し、Excelの関数を用いて請求書データと出荷データの照合を自動で行えるシートを導入いたしました。
この取り組みにより、照合作業にかかる時間を月間〇時間短縮できただけでなく、金額の差異や請求漏れをゼロに抑えることができました。
1円の誤りも許されない経理事務におきましても、この几帳面さとミスを防ぐ仕組み化の意識を発揮し、信頼性の高い帳簿管理に尽力してまいります。」
採用面接で頻出する質問と回答のポイント
営業事務から経理事務を受ける面接において、必ず問われる質問への受け答えの要点を整理します。
1. 「なぜ営業事務のままではなく、あえて経理事務なのですか?」
- 質問の意図: 経理職への理解度と、キャリア転換の明確な目的意識を確認する。
- 回答のポイント:「営業事務の業務にもやりがいを感じておりましたが、商談のサポートにとどまらず、企業のお金の流れを正確に記録・管理し、健全な経営を裏から支えるという、より専門的で責任の重い実務に携わりたいと考えたためです」と、専門性への意欲を伝えます。
2. 「営業担当者が経費精算の領収書を期日通りに出さない場合、どう対処しますか?」
- 質問の意図: 規則の遵守と、社内関係を壊さないコミュニケーションのバランスを見る。
- 回答のポイント:「感情的に締め切りを急かすのではなく、期日に遅れることで月次決算の遅延や振込処理の停止など、会社全体にどのような支障が生じるかを丁寧に説明します。また、営業事務の経験から営業担当者が月末に多忙であることは理解しておりますので、締め日の数日前に個別で声掛けを行うなど、先回りしたリマインドを徹底します」と答えます。
3. 「決算期などには業務が集中して残業が発生しますが、問題ありませんか?」
- 質問の意図: 繁忙期の負担に対する現実的な覚悟と、スケジュール遂行能力を確かめる。
- 回答のポイント: 「前職の営業事務におきましても、月末や期末の締め作業に合わせた業務集中を経験しておりますので、繁忙期の残業については全く問題ございません。締め日直前に慌てることがないよう、日頃から可能な処理を前倒しで進め、チーム内で進捗を共有しながら計画的に業務を完遂いたします」と、安心感を与えます。
営業事務から経理事務への転職を成功させるための準備
選考通過率を引き上げ、希望通りの内定を獲得するために応募前に進めておくべき具体的なアクションを整理します。
- 日商簿記検定の学習を形にしておく
実務未経験者の採用において、簿記資格は熱意と基礎知識を証明する最大の武器となります。3級は早期に取得し、可能であれば2級の学習を進めている(または取得済みである)状態にしておくことで、書類選考の通過率が大幅に向上します。 - 職務経歴書で「お金や数字に関わった実績」を前面に出す
単に「受発注入力」「電話対応」と書くだけでなく、「請求書発行件数(月間〇件)」「売掛金消込業務」「売上データのExcel集計」「入金差異の調査対応」など、経理業務と共通する実務内容を詳細に記載します。 - 応募先企業の規模と経理体制を確認する
大手企業の経理は分業化されており「売掛金管理担当」などの特定ポジションで未経験を受け入れるケースがある一方、中小企業では「一人で経理から総務まで全般を担う」求人が多く、より幅広い事務処理能力が求められます。自身の適性に合った企業規模を見極めて応募を進めることが大切です。



