転職における退職金とは?仕組みや相場・転職時の影響と確認すべき注意点
転職活動を進める際、給与や待遇、業務内容に意識が向きがちですが、見落としてはならない重要な要素のひとつが「退職金」です。
現職を退職する際に「自分は退職金をもらえるのか」「自己都合退職だとどれくらい減額されるのか」「転職を繰り返すと将来受け取る退職金はどうなるのか」といった疑問や不安を抱く方は少なくありません。退職金制度の仕組みや税制上の取り扱いを正しく理解していないと、想定外の減額に戸惑ったり、必要な税務手続きを怠って余計な税金を支払ってしまったりするリスクがあります。
転職における退職金の基本的な定義や制度の種類、転職に伴う支給額への影響、税金の手続き、そして転職活動中や面接選考の段階で確認しておくべき注意点について詳しく解説します。
転職における退職金の定義と法的な位置づけ
退職金とは、従業員が企業を退職する際に、在籍中の労働の対価や功労報償として企業から支給される金銭を指します。
労働基準法などの法律において、企業に対して退職金の支払いを一律に義務付ける規定はありません。そのため、退職金制度を設けるかどうか、どのような計算式でいくら支払うかは、各企業の就業規則や退職金規程によって自由に定められています。
厚生労働省の統計調査などによると、国内企業の約7〜8割が何らかの退職給付制度を導入していますが、約2割の企業には退職金制度が存在しません。制度がない企業の場合、どれだけ長く勤務しても退職時に金銭が支給されることはありません。
主な退職金制度の4つの種類
企業の退職金制度は、運用形態や支払い方法によって主に以下の4つに分類されます。
1. 退職一時金制度(社内積立型)
退職時に、企業から一括して現金を支給する最も伝統的な形式です。基本給や勤続年数、役職、人事評価などをもとに計算され、企業の自己資金や社内留保から支払われます。
2. 中小企業退職金共済(中退共制度)
自社単独で退職金制度を維持することが難しい中小企業向けに、国の支援のもとで運営されている外部積立型の共済制度です。企業が毎月掛金を納付し、退職時には共済機構から従業員の口座へ直接退職金が支払われます。
3. 確定給付企業年金(DB)
企業が将来の給付額(年金額や一時金額)をあらかじめ約束し、外部の信託銀行や生命保険会社等へ掛金を拠出して運用する制度です。運用実績に関わらず、事前に定められた規約に基づいた額が支払われます。
4. 企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業が毎月一定の掛金を拠出し、従業員自身が投資信託などの金融商品を選んで資産運用を行う制度です。将来受け取る金額は本人の運用成績によって変動し、原則として60歳以降に一時金または年金として受け取ります。
転職が退職金の支給額に与える3つの影響
転職に伴って勤務先が変わる場合、1つの会社に定年まで勤め上げた場合と比較して、退職金に関して以下の変動や影響が生じるのが一般的です。
1. 「自己都合退職」による減額措置
自己都合による転職の場合、会社都合(倒産や解雇など)や定年退職と比較して、退職金の支給額が低く抑えられるよう規程で定められているケースが多く見られます。勤続年数が短いほど減額率が高く設定されていることが多く、定年退職時の支給率の60〜70%程度にとどまる事例も珍しくありません。
2. 「最低勤続年数」の制限による不支給
多くの企業では、退職金の受給要件として「勤続3年以上」などの最低在籍期間を設けています。そのため、入社から1〜2年程度で自己都合退職した場合は、退職金が全く支給されない(ゼロとなる)ことが一般的です。
3. 生涯で受け取る退職金総額の減少
退職金の計算テーブルは、勤続年数が長くなるほど支給倍率が指数関数的に上がる「累進的な仕組み」を採用している企業が多く存在します。転職によって勤続年数がその都度リセットされるため、合計の就業年数が同じであっても、複数回の転職を経た場合は、1社に勤め続けた場合よりも生涯退職金の合計額が少なくなる傾向があります。
転職時に知っておくべき税金と確定申告の仕組み
退職一時金を受け取る際、税制面で手厚い優遇措置が用意されていますが、適切な手続きを行わないと一時的に多額の税金が天引きされてしまいます。
1. 退職所得控除の適用
退職一時金は、他の給与所得とは合算せずに分離して課税される「退職所得」として扱われます。勤続年数に応じた「退職所得控除」が差し引かれ、さらに控除後の金額が2分の1に軽減されるため、所得税・住民税の負担が極めて小さくなります。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
2. 「退職所得の受給に関する申告書」の提出
退職する会社から渡される「退職所得の受給に関する申告書」に記入して提出しておく必要があります。この書類を提出すれば、適正な税率で源泉徴収が完了し、自身で確定申告を行う必要はありません。提出を怠った場合、額面に対して一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまうため、翌年の確定申告で還付手続きを行う手間が発生します。
3. 企業型確定拠出年金(DC)の「ポータビリティ(移換)」
現職で企業型DCに加入していた場合、原則として60歳まで資金を引き出すことはできません。転職先の企業に企業型DCがあればそこへ資産を移換し、転職先に制度がない場合は個人型確定拠出年金(iDeCo)へ資産を移換する手続きを、退職後6カ月以内に行う必要があります。
転職活動および面接選考において確認すべきポイント
転職先を選ぶ際や選考を進める中で、退職金に関して確認しておくべき事項を整理します。
1. 求人票や労働条件通知書の「退職金制度の有無」
求人票に「退職金あり」と記載されていても、それが「退職一時金」なのか「確定拠出年金」なのか、あるいは「勤続〇年以上を対象とする」のかによって、将来設計は大きく異なります。退職金制度がない企業では、その分を月々の基本給や賞与に上乗せして還元しているケースもあるため、目先の年収だけでなく生涯を通じた賃金設計の視点を持つことが重要です。
2. 面接選考の場における退職金の扱い
一次面接や二次面接といった合否を見極める選考の席で、候補者側から「退職金はいくら出ますか」「どのような制度ですか」と直接尋ねることは避けるのが無難です。面接官に「仕事内容や事業への貢献よりも、福利厚生や待遇ばかりを重視している」という懸念を抱かせる原因になり得ます。
詳細な退職金規程や年金制度の種別については、内定後の「オファー面談(労働条件提示面談)」の場、または転職エージェントの担当者を通じて確認することが、選考での評価を損なわずに確実な情報を得る方法です。



