転職で給与の嘘をつくとどうなる?前職年収を盛るリスクと面接での正しい伝え方を解説
転職活動において、「少しでも高い給与で採用されたい」「前職の年収が低いと過小評価されるのではないか」という焦りから、前職の給与や現在の年収を実際より多めに伝えてしまおうか迷う方は少なくありません。
しかし、中途採用の選考において給与に関する虚偽申告を行うことは、極めて高い確率で発覚し、取り返しのつかない事態を招きます。本記事では、面接や書類選考で給与の嘘をついてはいけない理由、企業側に嘘が発覚する具体的な仕組み、生じるリスク、そして正直に伝えた上で希望年収を引き出すための面接対策について詳しく解説します。
転職で給与や年収の嘘が発覚する主な仕組み
選考面接の場を無事に切り抜けたとしても、採用決定後から入社手続きの段階にかけて、前職の正確な給与情報はほぼ確実に企業側へ共有されます。主な発覚の経路は以下の通りです。
1. 入社手続き時の「源泉徴収票」の提出
最も典型的な発覚のタイミングが、入社時に義務付けられている「前職の源泉徴収票」の提出です。
- 年末調整の手続き:
年内に転職した場合、転職先企業は前職の給与と合算して年末調整を行う必要があります。そのため、前職の発行した源泉徴収票の原本提出を求められます。 - 支払金額の記載:
源泉徴収票の「支払金額」欄には、その年に支払われた総支給額が1円単位で明記されています。面接時に申告した年収額と大幅な乖離があれば、人事や労務の担当者が確認した段階で虚偽が露呈します。
2. 住民税の決定通知書や課税証明書
前年の所得をもとに自治体が算出する「住民税」の特別徴収(給与天引き)手続きを通じて発覚するケースもあります。
- 転職先企業には、市区町村から従業員の住民税課税決定通知書が届きます。
- 前年の年収額に対して住民税の納税額が著しく少なければ、申告されていた給与額と実際の所得が一致していないことが判明します。
3. オファー面談前の給与明細の提示要求
外資系企業やコンサルティングファーム、一部の大手企業では、正式な内定提示(オファーレター発行)の直前に、直近数ヶ月分の給与明細や前年度の源泉徴収票のコピー提出を求めることがあります。この段階で申告と異なる数字が判明した場合、選考プロセス自体がその場で打ち切られます。
給与の嘘が発覚した際に生じる重大なリスク
年収を多めに申告して高待遇を勝ち取ろうとする行為は、単なる「サバ読み」にとどまらず、法的なトラブルやキャリア上の致命的な失点につながります。
内定取り消し(採用の見送り)
正式な労働契約が結ばれる前、あるいは内定通知の直後に虚偽が発覚した場合、採用判断の前提となる信頼関係が破綻したと見なされ、内定が取り消されます。履歴書や面接での虚偽申告は、重大な契約違反と判断されるのが一般的です。
懲戒解雇や契約解除のリスク
入社後に発覚した場合でも、多くの企業の就業規則には「経歴や採用条件に関する重要事項の虚偽申告があった場合は懲戒処分の対象とする」旨が記載されています。悪質性が高いと判断された場合、懲戒解雇や諭旨解雇の対象となり、履歴書に傷がつくことになります。
昇給・昇格への悪影響と社内評価の失墜
解雇を免れた場合であっても、人事担当者や現場上司からの信用は完全に失われます。「数字をごまかす人物」「倫理観に欠ける人材」という印象が定着し、重要なプロジェクトから外されたり、将来の昇進や昇給が見送られたりする可能性が極めて高くなります。
前職年収を低く感じていても嘘をつく必要がない理由
「正直に伝えると、低い給与のまま据え置かれてしまうのではないか」と懸念する方もいますが、採用側の視点を知れば、嘘をつく必要がないことが分かります。
| 採用側の視点 | 実態と評価の仕組み |
| 評価は市場価値と自社規定に基づく | 企業は前職の給与だけを見てオファー額を決めるのではなく、「自社の賃金テーブル」と「応募者のスキル・実績」を基準に算出します。 |
| 前職の給与水準が低い理由は考慮される | 「前職が年功序列だった」「業界全体の収益構造が低かった」といった事情は、採用担当者も十分に理解しています。 |
| 即戦力性があれば前職年収を超える提示は可能 | 募集ポジションのミッションに対して自走できる根拠を示せば、前職年収にかかわらず適正な額面が提示されます。 |
企業の多くは、前職年収を「参考情報」として確認しているに過ぎず、前職が低かったからといって必ずしも低い提示に縛られるわけではありません。
面接で現在の給与を正確に伝えつつ、希望額を主張するポイント
面接で給与について質問された際は、前職の数字を正確に申告した上で、論理的に希望額を伝える姿勢が最も高く評価されます。
1. 直近の額面総支給額を正確に述べる
基本給だけでなく、賞与や手当を含めた「源泉徴収票の総支給額」を正直に伝えます。
- 「直近の年収は、賞与を含めて額面で〇〇万円です」と過不足なく伝えます。
- 残業代が多く含まれている場合や、逆に前職が基本給主体の構成である場合は、その内訳も簡単に添えておくと客観性が増します。
2. 希望年収は「これまでの実績と貢献意欲」を根拠にする
前職の金額に不満を述べるのではなく、自社にどのような利益や生産性向上をもたらすことができるかを根拠にして希望を伝えます。
- 前職での具体的な成果(売上達成率、プロジェクト管理実績、業務改善の数値など)
- 入社後に早期に立ち上がり、業績へ寄与する覚悟
3. 希望額には一定の幅(レンジ)を持たせる
「年収〇〇万円を希望します」と一点張りで伝えるよりも、「前職の〇〇万円を基準としつつ、可能であれば〇〇万〜〇〇万円程度を希望しております」と幅を持たせることで、企業の給与テーブルと柔軟にすり合わせることができます。
面接での受け答え例文
面接で「現在の年収と希望給与」を聞かれた際の実践的な回答例です。
前職の給与が低めで、転職を機に適正な評価を求めたい場合
「直近の年収は賞与を含めまして額面で〇〇万円となっております。前職におきましては年功序列の給与体系であったため、個人の業務実績が待遇へ反映されにくい環境がございました。
貴社への転職にあたりましては、前職で培った〇〇の実務ノウハウやチーム運営の経験を活かし、早期に〇〇のミッションで成果を出したいと考えております。
そのため、希望といたしましては前職での実績や担う職責の重さをご考慮いただき、可能であれば〇〇万円から〇〇万円の範囲をひとつの目安としてご検討いただけますと幸甚に存じます。
もちろん、最終的には貴社の給与規程や評価基準に準じたいと考えておりますので、柔軟にご相談させていただけますと幸いです。」
このように、過去の数字は誠実に開示し、未来の提供価値を根拠として希望条件を提示することが、選考通過と納得のいく待遇獲得を両立させる確実なアプローチとなります。



