転職で給与維持を狙うのは難しい?現状維持の難易度や面接での上手な伝え方を徹底解説
転職活動を進める際、「年収を大幅に上げたいわけではないが、今の生活水準を保つために給与は下げたくない」「前職と同等以上の給与を維持したい」と希望する方は非常に多く見られます。
一見すると、給与アップを狙うよりも「現状維持」の方がハードルが低く、容易に達成できるように感じられるかもしれません。しかし、中途採用市場においては、企業の評価制度の違いや給与体系の変動により、意識して対策を行わなければ前職の年収を下回る提示を受けてしまうケースが珍しくありません。本記事では、転職で給与を維持する難易度や相場観から、現状維持を狙う際に年収が下がりやすい原因、選考面接で希望を適切に伝えるポイントまで詳しく解説します。
転職で給与を維持する難易度と市場の実態
転職市場において、「給与が変わらない(現状維持)」という着地がどの程度の割合で起きているのか、客観的なデータや傾向を把握しておくことが重要です。
転職で給与が維持される人の割合は約3割
公的な労働力調査や各種人材サービスの統計によると、転職によって前職と比べて賃金が「ほぼ変わらない(現状維持)」となった人の割合は、全体の約3割程度とされています。
- 給与が増加した人: 約4割
- 給与が維持された人: 約3割
- 給与が減少した人: 約3割
給与が増加する人と減少する人がそれぞれ一定数存在する中で、意図して「現状維持」のラインに収めるためには、同職種での手堅い即戦力性や、企業の給与テーブルとの綿密なすり合わせが求められます。
同業種・同職種であれば維持しやすい
これまでの実務経験や専門スキルをそのまま活かせる「同業種×同職種」の転職であれば、前職年収をベースとして同等水準の条件提示がなされるケースが大半です。企業側にとっても、教育コストをかけずに即戦力として計算できるため、前職と同等以上の給与を提示する妥当性が生まれやすくなります。
「給与維持」を狙っているのに下がってしまう主な原因
給与アップではなく現状維持を希望しているにもかかわらず、提示された年収が前職を下回ってしまう背景には、いくつかの典型的な要因があります。
1. 手当や残業代の構成の違い
前職の給与が高かった理由が「毎月の残業代」や「住宅手当・家族手当」であった場合、注意が必要です。
- 残業が少ないクリーンな労働環境の企業へ移ると、時間外手当が減少して総支給額が下がりやすくなります。
- 住宅手当や家族手当の制度がない企業では、基本給が前職と同等であっても、手当分が消失して年収ベースで数十万円落ち込む原因になります。
2. 賞与(ボーナス)の月数や初年度の算定期間
提示された月給が前職と同じであっても、年間賞与の基準が前職より低く設定されている場合、年収総額は維持できません。
また、入社1年目は賞与の査定対象期間に在籍していなかった影響により、初回の賞与が寸志(数万円程度)にとどまるケースが一般的です。その結果、入社初年度に限っては想定よりも年収が下がってしまう現象が発生します。
3. 未経験の業界や職種への挑戦
これまでのスキルを直接転用できない分野へ転身する場合、企業側は「未経験枠(ポテンシャル採用)」として評価します。即戦力としてのプレミアムがつかないため、前職の年収にかかわらず、その企業の未経験者向け初任給テーブルが適用されて年収が下がることが大半です。
転職による給与変動の傾向比較
転職の方向性や給与体系によって、給与が維持しやすいかどうかの違いを整理します。
| 項目 | 給与を維持しやすいケース | 給与が下がりやすいケース |
| 転職の軸 | 同業界×同職種での転職 | 未経験の職種や異業界への挑戦 |
| 業務レベル | 一連の業務を独力で完遂できる即戦力 | 指導や育成を必要とするポテンシャル層 |
| 前職の給与構成 | 基本給主体の安定した給与体系 | 残業代や各種生活手当に依存した給与体系 |
| 企業の意図 | 欠員補充や事業拡大に伴う即戦力補強 | 育成を前提とした若手採用枠 |
面接で「給与維持」を希望する際の上手な伝え方
選考面接において「現在の年収と希望給与を教えてください」と質問された際、消極的な印象を与えずに希望を伝えるポイントを整理します。
1. 手取りではなく「額面の総支給額」を正確に伝える
基本給、想定賞与、諸手当を含めた直近の総支給額(源泉徴収票の支払金額)を伝えます。中途採用では内定後に源泉徴収票の提出を求められるため、正確な数値を申告します。
2. 「現状維持で構わない」という消極的な表現を避ける
「前職と同じで十分です」「上がらなくてもいいです」といった伝え方をすると、仕事に対する熱意や向上心が薄いと誤解される恐れがあります。
「前職で培ったスキルを活かして早期に貢献する覚悟があるため、まずは前職と同水準を基準として希望したい」という前向きな論理で伝えることが大切です。
3. 希望額に一定の幅を持たせる
「〇〇万円を維持したい」と一点張りで伝えるのではなく、「前職の年収〇〇万円を基準とし、〇〇万〜〇〇万円程度をひとつの目安としてご相談したい」と伝えることで、企業側の予算枠とすり合わせやすくなります。
面接での回答例文
「直近の年収は賞与を含めて〇〇万円となっております。
貴社への転職にあたりましては、前職で培ってまいりました〇〇の実務経験や業務改善の実績を活かし、早期に〇〇のミッションで成果を出したいと考えております。
そのため、希望といたしましては生活設計の観点も含め、前職と同等水準である〇〇万円前後をひとつの目安としてご検討いただけますと幸甚に存じます。
もちろん、最終的には貴社の給与規程や評価基準に準じる前提でございますので、担う役割や期待値に応じて柔軟にご相談させていただけますと幸いです。」
オファー面談で条件を精査する際の確認ポイント
内定を獲得し、労働条件通知書を受け取った際は、年収の表面的な総額だけでなく、内訳を精査して実質的な生活水準が維持できるかを確認します。
- 基本給の割合と固定残業代の内訳
提示年収が前職と同じであっても、その中に多額の固定残業代が含まれており、基本給自体が前職より低く抑えられていないかを確認します。 - 初年度の賞与支給見込み
提示された想定年収が「年2回の賞与を満額受け取った前提」である場合、入社初年度の実際の支給見込みがいくらになるのかを人事担当者に確認しておきます。 - 手当や福利厚生の差分
住宅手当や退職金制度の有無により、額面年収が同じでも毎月の手取り額や生活余力に差が生じるため、年間を通じた支出を含めて総合的に判断することが大切です。



