面接で問われる「このペンを1万円で売ってください」という質問の意図と答え方のコツ
就職・転職活動における面接では、志望動機や自己PRだけでなく、応募者の発想力や営業スキル、コミュニケーション能力を測るために、少しユニークな質問が投げかけられることがあります。その代表的な例が、
「このペンを1万円で売ってください」
という問いかけです。
この質問は、特に営業職や販売職、マーケティング職の面接でよく出題されますが、業種を問わず“その場の対応力”を見るために使われることもあります。本記事では、この質問の企業側の意図、答え方のポイント、そして具体的な回答例を交えて、詳しく解説します。
なぜ面接で「このペンを1万円で売ってください」と聞かれるのか?
この質問は、以下のような目的で出されます。
1. 提案力・セールス力の確認
日常的には数百円で売られているペンを1万円で売るという無理難題を通して、「価値をどう見出し、相手にどう伝えるか」を試しています。
2. 柔軟な発想力や論理的思考力の評価
決まりきった答えが存在しないこの質問では、応募者が論理的に考え、創造的に解決策を導き出せるかが見られます。
3. コミュニケーション力のチェック
商品を“売る”という行為は、相手のニーズを引き出し、共感させ、購買意欲を高める必要があります。面接官は、応募者が相手視点で話せているかどうかを見ています。
回答の基本ステップ
この質問に対する理想的な回答は、「とにかく特徴を並べる」のではなく、相手のニーズに合わせて価値を提案することです。以下の4つのステップを意識して構成しましょう。
1. ヒアリング(相手のニーズを確認)
「どのような場面でお使いになりますか?」「書き心地を重視されますか?」など、相手に質問を投げかけてニーズを把握する姿勢を見せる。
2. 価値の再定義
通常のペンではなく、機能・デザイン・希少性・ストーリー性などを加えて価値を再構築します。
例:「このペンはNASAの宇宙開発技術をもとに開発されており、無重力でも使用可能です」など
3. 利益や未来のビジョンを示す
「このペンを使うことでどうなれるのか」「どんな効果があるのか」を伝えます。
例:「このペンで署名された契約書は、あなたのビジネスの飛躍を象徴するものになります」
4. クロージング(購入を促す)
「このペンが1万円なのは、未来の価値を先に手に入れていただくためです」など、納得感のある締め方をします。
回答例
「ありがとうございます。こちらのペンを見ていただく前に、まずお伺いしてよろしいでしょうか。
普段、どのような場面でペンをお使いですか?例えばご契約書への署名や、ビジネスのプレゼンの場面など――。
もしそうであれば、このペンはまさにその“勝負の瞬間”のために開発された一本です。
ペン先は滑らかで、どの紙質にも対応でき、書き心地に一切の妥協がありません。高級感ある金属製ボディと、人間工学に基づいた設計により、長時間の使用でも手が疲れません。
また、このペンには一流の経営者や政治家も使用している実績があり、持つ人の信頼感と品格を高めてくれる“勝負ペン”です。
1万円という価格は、ただの文房具ではなく、あなたのステータスと成果を引き出す“投資”だと私は考えています。
この一本が、あなたの次の成功のきっかけになれば幸いです。」
このように、「価値」→「ベネフィット」→「価格の正当性」の順で話すと、説得力が増します。
NGな回答例とその理由
「このペンは高級インクを使っていて、材質も上質です」
→ 特徴ばかりに終始しており、相手にとってのメリットが伝わらない
「有名ブランドなので1万円です」
→ 価格に見合う理由を感覚で押しつけている印象になりがち
「そんなの無理です。こんなペンに1万円払う人いません」
→ 柔軟性や挑戦姿勢がないと判断され、マイナス評価に繋がる可能性があります
まとめ
「このペンを1万円で売ってください」という面接の質問は、営業スキルだけでなく、発想力・対応力・相手目線の思考を総合的に評価する“思考型質問”です。
大切なのは、「高く売ること」ではなく、「どう価値を見せ、納得させるか」。ペンというモノの向こうにある“体験”や“感情”を伝えられるかどうかが、成功のカギとなります。
事前に自分なりのストーリーや価値提示の型を用意しておくことで、この難問にも落ち着いて対応できるようになります。